今年は、「変」の字に代表された2008年の次の年であり、いろいろな意味で刺激的な年の始まりのようです。100年に一度の大不況ということで、GMが"驕れる人も久しからず"で破産し、世界有数の優良企業トヨタが1年にして、最高益から赤字に転落したことからもよくわかります。一方で、World Baseball Classicでの日本の活躍には勇気づけられました。優勝はともかく、準決勝のアメリカ戦での勝利は特にその感を強くしました。野球の発祥の国でありメッカの大国に対して一歩も引かず堂々と勝利した姿に、地方大学が都会の名門大学に挑み勝利する姿を重ねて見ました。
徳島大学外科も、学会での名称の統一(徳島大学外科)や、キッズセミナーの開催(図1、2)、研修関連病院の研修医を交えたアニマルラボの開催(図3)などだんだん板についてきました。この同門会がさらに発展するための方策を皆で知恵をしぼって考えてみましょう。

 今年は、ダーウィンの生誕200年とガリレオの生誕400年にもあたる年で、考えてみれば、いずれも「神への冒涜」を糾弾された科学者です。ガリレオは地球が世界の中心であることに異を唱え、ダーウィンは人間が他の生物とは一線を画す神の創造物であることに異を唱えました。そうした思考の大転換が今の科学を支えています。この思考の大転換が徳島大学外科同門会の発展のさらなる起爆剤になると感じています。

 最近読んだノンフィクション「奇跡のりんご」の中にも我々に必要なエッセンスがあると思いましたので抜粋したいと思います。「りんご農家の木村さんが、不可能と言われた無農薬によるりんご作りに挑戦して8年間、りんごが出来ないどん底の時代を経験する。もうこれまでと死のうと思いロープを持って岩木山に登って行った時、大切なことに気がつく。それは、山の中の木は農薬を使っていないのに、害虫がたくさん付いたり、病気になったりすることはなく、下の土を掘るとふかふかとやわらかいことだった。(中略)彼があらためて土作りから改めて始めて7年目の初夏。おそるおそる、小屋の陰から畑を覗き込むと、本当に一面の白い花が咲いていた。涙があふれて止まらなかった。一人で、りんごの花に囲まれて酒盛りをして祝った。りんごの木にも、「ありがとう」と言いながらお酒をかけてやった。ついに無農薬のりんごができた。しかも、無肥料である。木村さんのりんごは、濃い味がする。甘いとかすっぱいを超えた、リンゴの味がする。不思議なことに、切って置いていても、色が変わらない。そして、腐らない。良い香りを保ったまま、ドライフルーツのようになっていく。彼のりんご畑には、様々な虫がいる。雑草も生えっぱなしだから、植物の種類も豊富である。しかし、その生態系が多様なため、一つの虫が大発生するということがない。自然の複雑な生態系は、チェック&バランス機構がうまく働いているから、単一の害虫が支配的になるということがあり得ない。木村さんは、豊かで複雑な生態系の保持と作物の収穫は両立できないという常識を見事に覆したのである。」この話にも、これからの外科同門会の発展のためのエッセンスである発想の転換の重要性、そしてあきらめない"我慢強さ"(死ぬ気でやれば何でもできる)、苦労の向こうにある何物にも代え難い達成感、そして厳しき中にも個性が輝く自由闊達な組織(図4)としてのバランス感覚の必要性が如実に描かれていると思います。

 実は、日本消化器外科学会の第二回総会(昭和44年(1969年)10月)を徳島大学外科の田北周平先生が主催されています(図5)。昨年、皆さんのご支援により史上最年少の日本消化器外科学会理事にしていただきました。消化器外科学会が若い会員たちにとって更に魅力ある学会となるよう努力するとともに、近い将来、徳島大学外科の総力をあげて総会を徳島の地で開催できるように努力することが、同門の皆さんへの私の恩返しであると同時に、外科同門会発展のための大きな機動力となると確信しております。同門の皆さん、これまで以上に有形無形のご支援をお願い申し上げます。

山本五十六の「男の修行」の行間には単なる精神論だけでないものがあると思いますので皆で(女性の方も)考えてみてください。
"苦しいこともあるだろう。言い度いこともあるだろう。不満なこともあるだろう。腹の立つこともあるだろう。泣き度いこともあるだろう。これらをじっとこらえてゆくのが男の修行である。"(図6)

 侍Tokushimaとして全国、世界に大いに"挑み"、飛翔する元気をだしましょう!

 

図1.キッズセミナーの一場面(三上君と学生と)

 

図2.修了証書を手渡す丹黒先生

 

図3.恒例の関連病院研修医たちとのアニマルラボ(比企直樹先生を囲んで)

 

図4.こんな格好で舞い上がっていいます

 

図5.田北周平先生

 

図6.「男の修行」をした研究室配属の優秀な学生たち