巻頭言
 

Z世代とは、1990年代半ば~2000年代に生まれた世代です。米国で1960年代中盤~1980年頃生まれが「X世代」と名付けられたことに始まり、その後の1980年頃~1990年代中盤生まれが「Y世代(ミレニアル世代)」です。注目される理由は、現在、アメリカではZ世代が人口の2割強を占め2020年代半ばまでに多くのZ世代が労働市場に出るため、社会や経済に対して与える影響が大きいことです。生まれた時点でインターネットが普及しており、当たり前のようにそれらを使ってきたことから“デジタルネイティブ世代”とも言われています。

Z世代の特徴は?

Z世代の特徴をまとめると以下のようになります。

  1. スマホ・SNSを駆使する能力が高い
    ICT機器を駆使して、情報をリサーチする力に長け、SNSを利用していて、共感や承認を重視する傾向があります。
  2. 社会問題や国際社会との距離感が近く、多様性を重視する
    インターネット世代のため、社会や世界がこれまでよりも身近に感じられるという特徴があります。
  3. モノよりもリアルな体験に関心・価値を感じる
  4. 出世に対する意欲が比較的低く、プライベート(WLB/ワークライフインテグレーション)の充実を重視する
    最近の報告では、「会社で働いて成功したい」という人は18%にとどまり、「お金を稼いで出世したい」人(36%)の半数だったとのことです(株式会社RES Z世代の出世感・資産に関する意識調査アンケート(PR TIMES))。

Z世代に対するリクルートや教育のポイントは?

Z世代に対するリクルートと教育には、SNSと体験型のアプローチが必須と考えられます。SNSに関しては、特にYouTubeやInstagram、TikTokといったビジュアルコミュニケーションを駆使して医学部生や研修医に興味ある内容を情報発信することが重要であり、さらにZ世代と一緒になって広報に力を入れる必要がありそうです。最近、我々も学生教育に、ホログラムやメタバースを外科解剖の理解向上のため取り入れる試みを始めています(図1)。これはリアル体験に関心・価値を感じるZ世代に対してはかなり良い手ごたえがあります。手術教育には、インターネットを利用した手術ビデオカンファレンスを行い、自分の手技を同世代と比較したり(切磋琢磨)、先輩や匠の先生方からコメントを直接もらえる仕組みにしています(Meta(旧称Facebook)が運営するWorkplaceという会員制SNS上に手術動画をupし、手術手技の共有化や、内視鏡外科技術認定医や肝胆膵高度技能医を取得するためのビデオクリニックなどを行っています)。現在、講座の垣根なく参加してもらい、大学病院/関連病院でできるだけ手術手技を共有し、一体となって、全体の手術レベルの向上に努めています。
体験型アプローチに関しては、リクルートも兼ねてハンズオンセミナーを外科同門会の午前中のプログラムとして合同で行うとともに(図2)、各講座でも個別に随時開催しています。アニマルラボに関しては、生物資源産業学部農場でのブタを使ったレジデントの手術トレーニングに、医学部生も一部参加してもらい腸管吻合や胆嚢摘出といった手術体験の場を提供しています。さらには蔵本キャンパス内にあるcadaver trainingセンターで実臨床を模した外科手術修練を行っています。

Z世代に対するワークライフインテグレーションと対話は?

プライベートの充実に関しては、徳島大学が他の大学・施設に先んじて行っていることをロールモデルである高須君から全国学会(第60回日本癌治療学会特別企画シンポジウム)で発信してもらっています(図3)。是非、ご覧いただきご批判をいただければ幸いです。これらのコンテンツをさらに医学部生や研修医のみんなに知ってもらうように外科同門会としてZ世代を意識した広報活動に力を注ぎたいと思います。
Z世代は、SNSの「いいね」や「コメント」に慣れ親しんだ世代のため、「双方向」のコミュニケーションを重視する傾向があると言われています。そのような世代との良好なコミュニケーションづくりには、これまでの世代の時以上に、face-to-faceでの膝をつき合わせるための雰囲気作りが重要になると考えています。

2023年は、本来の干支の癸卯(みずのと・う)です。「癸」は「種子が計ることができるほどの大きさになり、春の間近でつぼみが花開く直前である」という意味があり、「卯」は「春の訪れを感じる」という意味、また「冬の門が開き、飛び出る」という意味があると言われています。したがって、この2つの組み合わせである癸卯には、「これまでの努力が花開き、実り始めること」といった意味があります。まさに我々外科同門会が行ってきたこれまでの努力が大輪の花を咲かせることになるような予感がします。

これからの外科同門会を支えていくのは、Z世代の皆さんです。デジタルネイティブの名に恥じないよう、ICTを駆使してDiversity & Inclusionsそして柔軟な思考(時には、X世代、Y世代の先輩方の意見や知恵も尊重し)で外科同門会を牽引して行ってください。

Young surgeons, the scholars may surpass the master!” 『出藍之誉』

図1 医学教育におけるメタバースを利用した外科解剖の理解向上の試み

写真1

図2 外科同門会の際のハンズオンセミナー

写真2 写真2-2

図3 第60回日本癌治療学会特別企画シンポジウム4
がん医療の未来のための今 -次世代のためにできること、次世代がやるべきこと-

写真3