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膵臓から発生した癌のことを一般に膵臓癌(膵癌)と呼びます。膵臓は胃の後ろにある長さ20cmほどの細長い臓器で、頭部、体部、尾部に分けられます。わが国では、毎年18,000人以上の方が膵癌で亡くなっており癌による死亡原因の上位にあります。しかしその診断と治療は未だに難しく治療成績も満足できるものではありません。膵臓は体の真ん中にあり、様々な臓器に囲まれていて癌を見つけるのが非常に難しいのです。また、早い段階では特徴的な症状もないため膵癌とわかった時はすでに手遅れということが多いのです。 |
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【腫瘍マーカー】
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CEA:胃癌や大腸癌でも上昇します。(陽性率:73%)
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CA19-9:比較的膵癌に特異的なマーカーです。(陽性率:80%)
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DUPAN-2:膵癌で上昇することが多いマーカーです。(陽性率:63%)
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SPan-1:膵癌で上昇することが多いマーカーです。(陽性率:82%)
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その他:内視鏡下に採取した膵液の細胞診やK-Rasなどの遺伝子検査も出来ます。
ただし膵癌でもこれらすべてに異常があるわけではありません。いずれも正常であることもあります。
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【画像検査】
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US:超音波検査は最初に行われる画像検査です。
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MD-CT:最新のCT装置で撮影します。
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MRI (MRCP):MRIの画像から胆管や膵管を描出します
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ERCP:内視鏡を十二指腸まで挿入し胆管や膵管を逆行性に造影する検査です。
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PET:ポジトロン・エミッション・トモグラフィ最新の検査方法であり、他の検査で発見されなかった病変も描出可能なこともあります。徳大病院にも来年より最新のPET-CTが導入されます。
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MD-CT |
3D-CT |
PET-CT
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MRI(MRCP) |
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《最新の治療》
膵癌の治療は主に外科療法・放射線療法・化学療法の3つがあります。
【外科療法】
手術法は癌のある場所によって異なります。膵頭部に癌がある場合は、膵頭十二指腸切除といって膵臓の頭部から体部の一部までを胃の一部・十二指腸・小腸の一部・胆嚢などとともに切除します。膵尾部に癌がある場合には、尾側膵切除といって膵臓の体部・尾部と脾臓を切除します。癌のある範囲によっては、膵全摘を行う必要がある場合もあります。
近年言われているボーダーライン膵癌など必要があれば、門脈、腹腔動脈等の大血管を合併切除し、再建する術式も行っています。
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【化学療法(抗癌剤による治療)】
一般的なのは抗癌剤を点滴して全身に行き渡るようにする全身化学療法です。ゲムシタビン (GEM)という抗癌剤は、膵癌に対してこれまで使われていた5-FUやシスプラチンより効果があり最近よく使われています。徳島大学ではこのGEMと他の抗癌剤を併用した新しい化学療法を行っています。
術後の再発予防にはTS-1(経口抗癌剤)がゲムシタビンより優れているという結果が出され、徳島大学でも膵癌診療ガイドライン(2013)に従い治療を行っています。
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【放射線療法】
放射線療法は放射線を患部に照射して癌細胞を壊そうとする治療です。身体の外から放射線を照射する外照射と手術中に腹部の中だけに放射線を照射する術中照射があります。
最近は、通常の放射線治療に比べ体の奥深くにある癌細胞に集中照射できる特徴を持つ重粒子線治療というのがあります。癌細胞を攻撃する威力も数倍高く、周囲の正常な細胞に与える影響が少ないため体内の癌だけを効果的に死滅させます。手術や抗癌剤治療の難しい癌や、通常の放射線に抵抗性の癌に応用できます。
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【集学的治療】
膵癌は治療が難しい病気なので、1つの治療では十分な効果がないことが多く上記の治療法をいくつか組み合わせて行うこともよくあります。これを集学的治療といい、手術+放射線療法+化学療法や、放射線療法+化学療法などの組み合わせが代表的なものです。
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《最近の話題》
膵頭部浸潤性膵管癌に対してこれまで拡大手術が多く行われてきましたが、今年の日本消化器外科学会において名古屋大学からその有用性の有無に関する検討結果の発表がありました。3年間に全国14施設から集められた膵頭部浸潤癌症例112例につき標準術式を施行した群と拡大手術を施行した群とに群別し検討されました。手術時間、出血量、合併症、在院日数、予後などにつき比較検討しましたが両群間に有意な差はなく、拡大手術施行群では生存率はむしろ低い傾向が認められました。しかも高度の下痢を多く認めQOL(生活の質)が不良でした。よって膵頭部浸潤性膵癌に対しては肉眼的根治が得られるような手術を行えばよく、それ以上の拡大手術の意義はないとの報告が最近なされました。
ボーダーライン膵癌に関しては術前の放射線化学療法がその成績を改良するとも言われており、当科もこの全国多施設共同研究に参加しています。
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